下り龍

一部の方々の悩みの種である下り龍こと私が日々の鬱憤や書いた小説の小話などを独りでに語る何とも悲しくつまらないブログ

『いい子わるい子』の解説

こんちゃ!小倉です!

うん年振りですかね!さて私のことを覚えていますでしょうか!忘れたのなら私と貴方はそれまでの関係ってことですね。

今回は初めての試みとして(やっと)、過去にSSGに投稿したわかる人にはわかる程度に伏線的なものを貼ったけれどやっぱり地味に分かりづらい意味不作品の解説をしたいと思いまして!

 

さて、昨年のクリスマスの日に投稿した『いい子わるい子』という作品があってだな。

この作品が自分目で見てもめーっちゃ回りくどいわけよ。

いい子わるい子[腹痛] - ショートショートガーデン(SSG)

 

ざっとあらすじを言うわよ。

『中学三年生である花純とひなみは今年で最後になるであろうサンタクロースの訪れに夢を抱き、寂しさでいっぱいの胸をお互いの存在でかき消そうと手紙を書くのであった』

 

って感じ。

 

登場人物は

かすみ→受験勉強に追われる頭いい子。

ひなみ→かすみがいれば何だって楽しい性格がいい子。

かすみママ→かすみの頭がいいのは誇らしいけど親友を大切にして欲しい。実はもうひとつ顔がある。

 

みたいな。それ以外特に関係ないかな。

先に言っておきます。ここまで見てくださりありがとうございました!

👇🏻から解説

 

かすみ(実は純と霞をかけている)が食卓にいる母に一声かけて移動してもらうシーンがあるけど母もひなみも旧知の仲なので同じ部屋にいます。なのでひなみの可愛い願い事もかすみの凡そサンタクロースを必要とする純な子供とはかけ離れた思考からの願い事も聞いています。それでもかすみは子供なのでサンタクロースが誰なのか知りません。

いくらかすみの願い事がひなみと同じ親友を想ったものでも未来を望むひなみと成長という時間の停止を求めるかすみ、ひなみの望む女の子らしい夢いっぱいの可愛いワンピースというあやふやな物とかすみの望む厭に詳細がはっきりした薬物。

頭の良し悪しで物事を判断するわけではないけれどどちらが『いい子』なのかは明白。サンタクロースはいい子のもとにしか来ませんから。

サンタクロースはひなみのように唯一無二の親友との未来を選んだのでしょう。

かすみは大人びた子なので、昔から子供っぽいひなみとの差が激しいように思われるのも仕様です。

クリスマスの朝、プレゼントが届いていないことを悟ったかすみはきっと絶望に似た感情と共に自分が夢見る子供ではなくなったことに気づくでしょう。

けれど母はサンタさん来なかったね、と励ますように手編みのマフラーをくれるしかすみが成人しても誕生日やクリスマスイブにケーキを買って一緒にお祝いしてくれます。

「なんか思ってたのとデザイン違った~」とぼやきつつも可愛いワンピースがとても似合うひなみは、「次はあたしがかすみちゃんのサンタさんだ!」とでも言ってかすみに似合うワンピースを見繕ってくれるのでしょう。

かすみはきっとお母さんになるまで、サンタクロースの正体を気づきません。でも気づいたその時はひなみに長い前置きをしてから「実はサンタさんってお母さん達だったんだよ」と言い、ひなみに「今まで知らなかったの~?!」と大笑いされることでしょう。どちらも違うことに赤面して笑い合うのです。

 

サンタさんがいずれ来なくなる将来を恐れたかすみのすぐ側には大人になっても変わらず優しいサンタさんがいた、というお話でした。

 

いやなげえわ。

祭りのあと

おっす!おら小倉!

夏だね!今年はお祭りに三回行ってきました!十日にある花火大会に友達と行く予定を少し前から立てていたんだけどどうやら雨みたい!友達に会うことと花火を皆すごい楽しみにしていたのもあって雨天決行なわけないからとっても残念なの!(犬山城の花火大会は本当に来て損は無いぞ!)

その三回行った中の一回、地元のお祭りの帰りに小説のネタになりそうな出来事があったから九割程度加工して短編にしました!今度出す短編集『奇奇怪界』に入ってる一作の前日譚にもなるのでもし時間があれば読んでみて下さい~!あと急ピッチで書いていますが勉強することが多くてあまり進んでません!多分十月以降になりますスミマセン!小説の進捗を文字数に表して晒すアカウントを作った方がいいかもなぁ……。

昨年のお盆の話も後編を一応書いています。プロットばかり思いつくから困ったもんだぜ。

 

祭りのあと

 

 一歩、一歩と前へ進むに合わせて賑やかな喧騒が遠ざかる。下駄の音はなるべく立てないように気をつけながら真っ直ぐ歩く。
 ふと両足のほぼ同じ場所、緒が擦れる部分にジリ、と鋭い痛みが襲った。毎年の事ながら下駄ずれだ。
 一度感じてしまうと先程のように自然に歩くのは難しい。私はひとつため息を吐き、信号よりも近い所にあった歩道橋の入口にある少し高めの段差に腰を下ろして休憩することにした。
 左手に提げていた巾着袋からスマホを取り出して時間を潰す。たまに液晶から顔を上げて少し遠くにある信号を待つ車の赤い光や一斉に走り出す最初のもたついた速度に合わせて目を流したりしていると、突然視界の真ん中に浴衣を着た幼稚園児くらいの小さな男の子が私の前で仁王立ちになった。
 挑戦的な姿勢とは裏腹に女の子のような愛らしい声で男の子は言った。

「もしかして、幽霊の人ですか?」

 最初に子供とは分からないな、と思った。素っ頓狂な質問に私は答える気が無かった訳ではないけれど私は何故かにこりと笑っただけで答えた気になった。
 私に向かって「どひぇ~~~!!」と叫んだ男の子は次に両手を上げて逃げるのかと思えば、私の頭にずらして着けているおかめのお面を指さしながらよいせ、と隣に座った。

「お兄さんはこの町に住んでるの?」

 きらきらとした二つの瞳がこちらを見ている。返事をしなくても話題をあっちこっちに飛ばしながら日常話をつらつら話す口が止まらない様子の男の子に実は私じゃなくておかめのお面に話しているようにも思えてきた。
 夏といえばホラー。少し驚かしてやろうか、そう思い口を開くとバタバタと慌ただしい音が聞こえた。音の方向へ振り向くと近くにいても何らおかしくない第三者が男の子が来た方向から走ってきた。男の子よりもっと小さな子供を背負ったお母さんと思われる人だ。

「こら一郎!そんな所で何してるの!」

 肩で息をするお母さんは男の子……一郎君の手を引っ張りこちらには目もくれず大股を開いて歩いて行った。
 足をもつれさせながら男の子はこちらに振り向き紅葉のようなちっちゃな手を振る。お母さんが見ていないのを確認し私も手を振った。
 あの男の子とはまたいつか会う気がする。あの子がもう少し大きくなっていい大人と悪い大人の区別がつくようになったらさっきやり損ねたドッキリを仕掛けるとしよう。
 私は立ち上がり、脱いでいた下駄を履くといつの間にか見えなくなっていた親子の背を追うように信号のある方向へと足を進めた。
 寂しさで満たされていた心はどこか幸せな気持ちで溢れていた。

提灯 (前編)

 お母さん、今日お兄ちゃんに会ったよ。

 何気なく言ったその言葉は誰の耳にも届かず言霊はみるみると縮み、消えた。
 私は当時まだ幼く、自らが発した言葉の意味を到底理解していなかったのだろう。
 母が私の言葉に返事をしなかったのはあの日だけで、私と一度目を合わせたら顔を覆って泣いてしまった。
 そこで私は初めて『この話はタブーだ』って気づいたんだっけ。

 

 懐かしい夢を見た。久しぶりにあの日のことを思い出した気がする。忘れたことなんて無かったのに不思議な気持ちだ。
 眠気に閉じかける瞼を擦りながら階段を降り、朝ごはんを作る母に挨拶をしながら毎日の習慣になりつつある和室へ足を運ぶ。
 私の背丈より少しだけ小さい仏壇の前に座り手を合わせる。瞼を閉じて今までの家族の思い出に肩まで浸かる。
 この和室も彼の部屋だった、とか、仏壇の大きさも当時の彼の身長と同じ、だとか。
 まあ、全て父から聞いた話なんだけど。

 彼……兄は幼い頃トラックに轢かれて亡くなった。父はそのトラックの運転手で、息子の血肉をフロントガラス越しに浴びて精神を病み、数年後に玉突き事故に巻き込まれて亡くなった。

 母はアルツハイマー病で、理解者である家族二人を亡くして更に無理をするようになったと泣きながら祖母が話していた。

 私と兄は歳が離れていて、私が産まれる頃には既にこの世を去っていた。優しい父だって陰鬱な表情しか見たことがない。テレビに映った火達磨のように燃え盛る車と父の小難しい名前は他の車よりも名前よりも明るく、眩しく、鮮明に見えた。

 

「今年は何に乗って来るんだろうね」
 母はこの季節になると必ず同じ言葉を言う。
「お父さんとバイクでツーリングかな。お兄ちゃんもそろそろ免許取れる歳でしょ」
「そうかもねぇ」
 仏壇の横の提灯は音もなくくるくると回り続ける。昔から提灯の中を覗くのが好きできらきらと回るものを触ろうとしていつも怒られていた。
 きっと覗くのが好きな理由は綺麗な柄よりもその温かさなんだろう。父の手の温かさや背中の温かさと同じだから。

 夕焼けに焦がされる様に電柱やそれに留まる蝉が影を黒く濃くする。
 空には一筋の煙が立ち上る。一瞥して視線を下げるとパチパチと火が木に燃え移る音がする。名前の知らない木の渋い臭いが鼻腔に充満した。


 木屑の大半が黒い塵となる頃にふと生暖かい風が私を通り過ぎる。
「お母さん、お父さん達帰ってきた」
「そう。家に戻ろうか」
 母は大きな音を立てて家のドアを閉める。私は迎え火の木が全て焼き終わるのをじっと見て、一人納得して家に入った。